会社と働く人との関係を創る思想

前回のブログで、モチベーションの本質という内容を記載しましたが、高度成長期から成熟期へと突入した現代において、物質的な欲求が満たされた若い人が社内に多くなってきて、また、会社という組織への高度成長期とは違ったスタンスを持つ人が増えている中で、どのようにモチベーションを上げていくのかというところまでお話ししました。そして最後に、モチベーションを上げるためには、会社と働く人との関係を創る思想というものを再度見直し、作り上げる必要に迫られているということを書いて終わりました。

この会社と従業員の関係の思想とは、具体的に言えば次のようなものです。たとえば、高度成長期には、基本的に労働市場の需給バランスというものが、需要が多く供給が少ないという、今では信じられない環境にありました。これは、景気が良かったということと、そしてさらに重要な要素として、その時期の企業の多くは、労働集約型の企業がほとんどであり、米国を中心とした先進国の労働を代替していたわけです。そのような環境の中で、企業は、あまり個人の能力を重要視せず、長く一生懸命に働いてもらえば企業も従業員もハッピーになるという思想で、制度を作り上げました。それが、終身雇用制度であり、退職金制度であり、年功序列という給与体系で、最も脂の乗り切った働き盛りの給料よりも、定年まぢかの人の給料が高いという、途中でやめると損をしますよ。という形で定着率を高めてきたということです。

しかし、バブルがはじけ、更に円高が進んでくると、労働集約型の仕事は海外に移転し始め、労働市場の需給バランスが供給過多になって、いままでの制度では、会社の存続が危ぶまれるようになり、そこで登場したのが、成果報酬という制度の導入です。しかし、この成果報酬という制度を、根本の思想を変えることができずに、表面だけで取り入れようとした企業が多かったために、ほとんど機能しないという悪い面ばかりが、表面化して成果報酬制度はよくないという間違った結論を出すに至りました。報酬制度で成果と能力に対してそれに報いるというのは基本的には正しい報酬制度の在り方です。でなければだれも努力も工夫もしなくなります。

これが失敗した多くの原因は、労使の基本的な関係の思想を見直さずに、成果報酬制度は、経費節減できるという短期的な利益を追求したことで、基本に流れる長期的に働くことを推奨する制度と成果報酬制度とがぶつかり合って、制度的にも働く人々の中でも自己矛盾が発生し、その矛盾がストレスとなって一気に爆発したということだと思います。

これを解決するためには、最初に触れたように、再度新しい時代にあわせた、労使関係の思想を構築し、その思想に合わせ制度を入れ替えていくことが重要になります。これは、一気にはできませんので10年単位の制度移行ということが必要になります。

これからの日本の社会においては、知的労働型になっていくことと、物質的な価値よりも精神的価値が重視され、自己実現を達成するようなキャリア・アップという考えが基本的になってくるということを前提にしなければ、優秀な人間ほど会社を辞めていくという時代になっていくでしょう。そこでは、優秀な人間が集まるような、そしてたまたまそこでは実力を発揮できなかった人が辞めやすく、新たなチャンスへ挑戦しようと旅立っていけるような思想が必要になってくると思います。基本的には、辞めやすい会社であり、その中で優秀な人間をしっかり引き止める人材マネジメントを持つという思想です。給与体系は、旧来の後払い型から実力に合わせた実力清算型に移行することが求められます。そうでないとやはり、モチベーションの下がった人が辞めるのをためらってしまいます。