シャープの戦略ミス

ニュースによると、シャープは、銀行からの借り入れの担保として、国内のすべての事業所や工場の敷地と建物に、根抵当権を設定したとのことでした。

数年前まで、アクオスブランドで一世を風靡したあのシャープが、という思いが皆さんの中にあるのではないでしょうか。

製造業の空洞化が叫ばれた2010年ごろに、「亀山モデル」という国内での高品質を売りにした、期待のビジネスモデルのようなものを発表した時は、日本中、高品質路線が日本のあたらしい時代を切り開くものとして脚光を浴びました。CMには、日本でもっとも高級感を醸しだしてくれる女優を起用し、シャープの液晶技術は、新興国の追随を許さないほど高いものであるという印象を与え、アクオスはあっという間にテレビのトップブランドとなっていきました。

この時にシャープが重要視した戦略アプローチは、「資源アプローチ」であったと判断します。

資源アプローチとは、企業業績の差異の源泉を、企業内にある経営資源に求める。「成功ししている企業とは、内部に優れた能力を蓄積している企業である」という考え方です。

戦略論には4つのアプローチがあります。

1.ポジショニング・アプローチ

企業の成功を促す要因を外部に求めるもの。目標達成にとって都合の良い環境に身を置くことを最も優先する。外部環境が企業の目的達成に都合がよい位置に身を置くことを優先する戦略です。

2.ゲーム・アプローチ

利益の源泉を外に求めることでは、ポジショニング・アプローチと変わりませんが、ポジショニング・アプローチが、自社の利益を収奪する他社からの圧力が小さい「おいしい」状況を見つけ出して、そこに自社を位置付けることに重点を置くのに対して、ゲーム・アプローチでは、そうした「おいしい」状況を自らの行動によって作り出す点に注目します。今盛んに叫ばれるビジネスモデルの構築の中核にはこうした行動があります。

3.学習アプローチ

資源アプローチと同じように、自社内の独自の経営資源に注目し、さらに、その経営資源、とりわけ知識や情報といった「見えざる資産」が蓄積されるプロセスそのものに注目します。最近いわれる「知的資産経営」の考え方の基本となるアプローチです。

そして、先に述べた「資源アプローチ」です。

アクオスが一世を封部していた頃、同時に世界はあらゆる情報をデジタル化することが進行し、そのデジタル化は、電子機器のモジュール化を意味しました。つまり液晶も単なるモジュールの一つとなってしまったのです。そしてモジュール化は、価格競争をもたらしました。いくら世界最高水準の液晶といっても、モジュール化の時代では単なるちょっといい部品にすぎません。ほとんど変わらない商品が次々出てきました。そこでシャープは、液晶画面の大型化を目指し、40から50さらに60、70インチの液晶が作れるインフラを作り、大型の液晶画面技術という経営資源に注力して工場を作りました。しかし、テレビの需要はそんなに大型化しませんでした。更に、大型化どころか、スマートフォン・タブレットPCという超小型液晶パネルの需要が爆発し、フィーチャーフォンでは強かったアクオスモデルも、iPhoneとギャラクシー(サムスン)に完全に出遅れてしまったのが、大きかったと思います。

このように、状況によって取るべき戦略は、変えなければならなかったのに、内部の資源の充実にとらわれ過ぎて、外部の変化が起こっても内部の資源アプローチを捨てきれず、出遅れてしまったというのが今回の結果であると私は思います。

内部の経営資源はもちろん重要ですが、外部環境を見極め柔軟に自らのポジションを変え、さらに有利になるよう働きかける外部戦略が日本の企業に求められるところです。