弱者の戦略

2012年12月3日(月曜日)

企業の戦略を立てる場合、外部環境(顧客市場と競合関係)内部環境(自社のヒト・モノ・カネ・情報・知的財産)などを統合して、その時のその環境で最も自社に有利な戦略を選択する必要があります。

競合関係を見た場合、最もシェアを獲得している「リーダー」と、それを追いつき追い越そうといしている「チャレンジャー」と、市場の特定セグメントをついてそこでリーダーとなる「ニッチャー」、最後に市場の中でリーダーに挑戦せず現状を維持してあえて危険を冒さない「フォロワー」という分類があります。

そして、これらの4つの類型を扱う戦略論として、競争地位戦略があります。

ここで、最近この競争地位戦略をリアルな状況で展開している業界がありますので、リアルタイムのケーススタディーとしてお話ししたいと思います。

皆さんもご存知かもしれませんが、サッポロビールが今月から「セブンプレミアム」ブランドで「100%モルト」というPB商品のビールを発売します。

ビール業界は、現在、リーダー(キリン)とチャレンジャー(アサヒ)がデッドヒートを繰り広げ、ニッチャー(サントリー)がプレミアムモルツで特定市場を獲得し、フォロワー(サッポロ)は3位だった地位を、エビスの地位をプレミアムモルツに奪わることで4位に転落してしまいました。

ビールのシェアを獲得する重要な戦略は、マーケティングが基本となります。いかに市場とのコミュニケーションに成功するかがすべてといっても過言ではありません。

ビールの価格は税金とマーケティング費用でできているとさえ言えます。

そして、ビールのマーケティングで最も重要なのが、ブランド戦略です。いかに自社のブランドを指名買いしてもらえるかということです。この辺は、コーラなどの飲料とよく似ています。

従って、ビール業界各社は、メーカーブランドを限定的にそのチェーンだけで販売するということは行ってきましたが、チェーンブランドのビールを作ることはしてきませんでした。

ビール業界でのマーケティングでもう一つ重要なことは、スーパーやコンビニエンスストアの棚の量と質の確保です。いかにいい場所をいかに多くとれるかが勝負です。

それには、広告の量とリベートなどが大きく影響します。

サッポロは、このブランドと流通の棚をいかにマーケティングで他社に勝っていけるかと、セブンイレブンからのPBのプロポーザルを天秤にかけ、日本一ビールを販売するセブンイレブンの棚を安定的に確保することが、莫大なマーケティング費用をかけて上位3社と戦うより、すべての状況を加味したうえで最も正しい戦略であると決断したわけです。セブンイレブンのPBを作りマーケティングはいわばセブンイレブン側に依存するという形です。これには、業界全体に激震が走ったといいます。

それほど、ビールという商品はブランドというものを重要視しています。

サッポロは、セブンイレブンのPBを作ることにより、安定的な生産量を確保することができること共に、4社の中で最も弱いマーケティングをセブンイレブン側にやってもらい費用が浮くこというメリットがあります。

セブンイレブンは、このPBを棚の最もいい位置に陳列しPOPなどで販売を訴求していくことでしょう。

サッポロとしてはある意味苦渋の決断だったと思いますが、株式市場は好感したようで株価は上がっています。

今後の課題は、ビール会社として既存商品のマーケティングをどのようにして強化できるかがです。セブンイレブンとの協力で情報を共有しながら顧客ニーズを把握することから始めることが必要だと思います。

そして、ここでも証明されたことは、需要よりも供給が過剰になった市場では、顧客に最も近く顧客の情報を持っている流通がイニシアティブを握るということです。