2013年

6月

03日

消費者は閉店セールに弱い

2013年6月3日(月曜日)

今年も6月に入り、関東甲信越も先月末に例年より10日ほど早く梅雨入りをしました。

景気もアベノミクスへの期待感から、なんとなく上向き加減ではないかという雰囲気が漂っていますが、給料はまだ上がらないにもかかわらず、光熱費やガソリン代や輸入に原料を頼っている食品などは値上がりし始めています。

そんな中で、銀座の松坂屋が6月末をもって89年の歴史にいったん幕を下ろして、その後複合商業施設を建てることとなりましたがその閉店セールが4月からずっと盛況のようです。

銀座松坂屋では、4月の上旬から「閉店売り尽くしセール」と題して、3か月にもわたるロングラン閉店セールで売り上げを伸ばしています。

前年対比売上は

4月 2.7倍

5月 約3倍

となっており、6月は最後の月ということもあり更にヒートアップすることが予想されています。

松坂屋は4月から、この閉店にかけて文字通り「手を変え品を変え」て閉店セールを仕掛けた模様です。

なぜこれほどまでに閉店セールが活況化というと、それは消費者の心理にその秘密は隠されています。

私は実際に行っていないのでここからは推測になりますが、普通閉店売り尽くしセールとは、閉店してしまうので店舗にある在庫を赤字で放出するというものだと思います。

でも、松坂屋はほかにたくさんの店舗があり、商品を回すことで赤字で売る必要はありません。さらに、百貨店の通常の仕入れは、売れた分だけ仕入れをするというような商習慣がありますので、店の在庫が即バランスシートの資産となるようなものでもありません。

ですから、たとえば、ルイヴィトンやエルメスやコーチなどを販売していたとしても、そこにあった在庫を仕入れ値以下で売るようなことはしないでしょうし、ブランド側もそんなことをされたら他の店舗に迷惑がかかるので商品の移動をするでしょう。

しかも、3か月も長きにわたって閉店売り尽くしセールをやっているところを見ると、新たに商品をどんどん投入していると思われます。新たに商品を仕入れてそれを仕入れ値より安く売るなどということはあろうはずがないと、ちょっと考えれば誰でもわかることと思います。

でも、この売り上げはどうしたことでしょう。

それは、閉店売り尽くしセールということばに対する消費者の思い込みにあります。

通常の営業を続けている場合の売り尽くしセールであれば、店はそのまま継続するのであり、そのセールが自分にとってメリットがあるかという判断が中心となります。

しかし、その売り尽くしの前に『閉店』ということばがつくと、そのセールに行かないと店はなくなるので、損をするのではないかという心理に変化します。

ここがポイントです。

行動経済学では、人間は「得をする」という場合と「損をする」という場合にどちらに強く反応するかというと、2倍ぐらいの差で「損をする」ということを避けようとします。

つまり、これを買えばとてもお得ですよ。というよりも、これを買わないと損をする。といった方が強く反応するのです。

ですから、期間限定というのも非常に消費者心理を突いたキャッチフレーズです。そして、その消費者心理が、店舗に行っていろいろな販促物で「閉店売り尽くし」を強調し、さらに客数が多くて群集心理に火がついた時には、争うように消費するようになります。

通常の経済学では、人間は合理的に経済活動をするという前提で経済を見てきましたが、行動経済学では、人は必ずしも合理的に経済活動をしているわけではなく、心理的な状況によって時には間違った経済的活動をしているということが明らかにされました。

私の考えでは、人は買い物をする場合、ある程度の金額のものであれば、一種の興奮状態になると思っています。最初は非常に慎重に購買活動をしようとしていても、何かのきっかけを与えることによって衝動的に購買してしまうことを考えると、買い物というのは一種のストレス発散でもあると思われます。

この消費者心理を理解したコミュニケーション(広告から陳列、POP、接客も含む)の演出をいかにうまくできるかが売り上げをあげるうえで非常に重要なポイントです。

「買わないと損をする」と思わせることが、バーゲンセールではコミュニケーションの軸になります。