2013年

6月

17日

官僚的組織に生まれる「ことなかれ」の空気

2013年6月17日(月曜日)

日本プロ野球のボールが、飛ばない統一球になっているはずが、バンバンホームランが出るのでおかしいということから、統一球ではないのではないかという疑惑が生まれて、日本プロ野球リーグを追及したところ、実は飛ぶボールにこっそりと変えられていたという訳のわからないニュースがありました。

そして、コミッショナーがこの事実を知っていたか、知らなかったかという問題に発展し、事務局はコミッショナーも知っていたというコメントを出しましたが、その後、訂正がありコミッショナーは知らなかったということになったのですが、なんかすっきりしない状態で幕引きされた感じで、コミッショナーは辞任しないということになっているようです。

自分の名前がボールに入っているという重みを、どれだけ認識しているのかというツッコミを入れたくなるのは当然だと思います。

このようなことは、日本の会社では、かなり、あたりまえのように取り扱われ、問題が発生すると「私は知らなかった」ということで、部下をトカゲのしっぽのように切り捨てることが多々ありましたし、今でも官僚的組織には依然として引き継がれている悪しき慣習です。

大きな問題が発生した時に、最終的にはトップの責任であり、重要問題を「知らなかった」ということ自体、トップとして最も恥ずべきことだということが理解できていない証拠です。

そして、知っていた現場の人間を処分するということになるか、様子を見て何もしないかのどちらかで、時のたつのを待つというやり方をするのが常套手段です。

ちょっと前に一橋大学の名誉教授の野中郁次郎さんが共同執筆された「失敗の本質」という著書に、太平洋戦争における日本軍の官僚組織の失敗の連鎖を丹念に調べ、現代の経営に活かすべき内容が記されていました。

それによると、

「日本軍は、設立当初はメンバー同士が自由闊達に議論する組織であった。ところが、時間の経過とともに制度が完備され、特に人事制度が明確になると、制度上、どうすれば昇進できるのかが明確になっていった。こうした状況で、昇進制度に忠実な他律的エリート(うまく立ち回れる賢い人間)たちが育成され、実権を握っていった。彼らは、前例主義を踏襲し、既定路線を走ることのみに気を配り、決して自らの意思と責任の下に行動することはなかった。こういう『他律的エリート』が統率する組織では、メンバーは容易に『取引コスト』(昇進するのに損か得か)を計算し、合理的計算のもとに全員一致で『空気』を読み取ることになる」

こういった組織では、大局観を持って、理念に従い自らの意志と責任を持って正論を発言する人間は、エリートからはずれることになり、前線(いまでいう支店)に飛ばされることになり、他律的エリートが踏襲する前例に従って、アメリカの最新の武器と情報戦略の前に玉砕するという結果になっていきました。

このようにして、他律的エリートたちが、彼らが意味する合理的に不条理で不正な結論を導き出すことになるということです。

このような組織では、他律的エリートのトップであるがゆえに、理念と目的を実現するために、理念と目的を明確に浸透させ、その実現に必要な情報要求を組織に命じ、その情報要求に応え集まった情報をインテリジェンス(智慧)に加工し、実践に役立たせるという本来の情報収集・処理活動をしなくなります。

そして、都合のいいことだけ聞き、都合の悪いことは排除するというトップの『空気』を察した『他律的エリート』達は『取引コスト』を計算し合理的に耳触りのいい情報のみを上げることになります。

このような組織にならないためには、

1.基本理念と経営哲学を経営者が明確に組織に浸透させる

2.意思決定と行動は基本理念と経営哲学を基に行うのであって

  社長も新入社員もそれに沿って議論を交わす文化を創造する

3.情報収集も同じように理念と経営哲学を実践するためのものを

  収集する。(トップの耳障りなど問題にしない)

4.部分最適に陥りやすい部署ごとの壁を排除するような、仕組み

  やイベントを組み込む。

5.問題指摘と提案をセットにした意見を歓迎する組織風土を醸成

  する。

まずは、取締役会から始めることをお勧めします。