2013年

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10日

賃上げ要求と人材戦略のこれから

2013年11月10日(日曜日)

来年4月の消費税の3%増税が決定して、世界に対し財政再建のための施策を決定したというアピールを済ませた政府ですが、消費税増税後の国内景気の腰折れを何としても回避すべく、政府と経済団体と労働組合が一緒になって来年の賃上げを企業に呼び掛けるという異例の事態が起きています。

大手企業の社長たちが、来年度の賃金アップは企業の使命とばかりにマスコミに積極的に出て発言しています。

確かに、家計所得が10年間下がり続けている中で、消費税が上がれば景気の腰折れは間違いないと思います。

でも、賃金の上げ下げというのは、労働市場の需給バランスが基本になっています。

企業の募集する人員数と職を求める人員数が、前者が後者よりも多ければ、企業は人を確保したいという理由で賃金をあげていきます。しかし、後者が前者よりも多ければ人が余っているので企業は賃金を上げないで、その分を違う投資先に投資するというのが図式です。

一部の大手企業は、利益がたくさん出ているということと、グローバル化していて日本の人件費の部分を少々上げたところで、社会的な立場を考えた場合相対的にいいという判断もできると思います。

でも、利益の出ていない中小企業は、そうはいかないでしょう。

下げないことがやっとというところが、全体の半数以上を占めるのではないかと思います。

こうなると、企業と企業の格差と、給与格差が広がっていくと思われます。

こうした中で、人材戦略をどうしていくかということになります。

まず、企業で働く人を従業員という一括りとして見ることから、誰と誰という個別の人材をしっかり見ていく必要が出てきます。

人材はいまさら言うまでもなく、企業にとって最も重要で最も高価な資源です。

その人材を一括りとして見ることができたのは、高度成長期の欧米に追い付くまでの「答えの明確な時代」でした。その時代では、do more better という考え方でよかったので、人をたくさん雇い入れ平均レベルを上げることで、大量生産による大量消費への対応をしていればよかったからです。

しかし、今は違います。

最も重要で最も高価な人材は、答えのない時代に、データを情報に変換し、情報から極めて精度の高い仮説を立てることができて、実行力がある優秀な人だけになります。

それ以外のルーチンの仕事は、IT化と機械化・ロボット化により、極めて付加価値が低い作業になっていきます。

ということは、極めてクリエイティブで実行力のある人間は、是非とも会社にいてもらわなければならないので、賃上げは勿論、あらゆるインセンティブを与えても残ってもらわなければならないですし、逆に、言われたことだけやっている人は賃金は上げられないですし、言われたこともできない人は賃金は下げられるということになります。

つまり、これからの時代は、労働者という資本家に対しての弱者としての一塊ではなく、一人ひとりが違う仕事人としての価値の格差を求められることになっていくでしょう。

従って、ベアのアップという概念はなくなっていくと思います。

優秀な人は、引く手あまたで報酬は上がっていき、そうでない人はそれなりの報酬というふうに格差が広がっていくでしょう。

そうしないと、グローバルが進む中で、企業に優秀な人を引き留めておくことはできなくなるからです。

これは、プロ野球では当たり前のことです。

優秀な選手は、引き留めるために昨年の倍の報酬を用意し、そうでない選手には戦力外通告がなされます。

これが、経済原理に基づいた賃金決定の基本ではないでしょうか。

従って、企業の人材戦略は、最重要で高価な人材を一塊で見るのではなく、これから求められる人材像を明確にして、一人ひとりのパフォーマンスをしっかり評価する体制を整えて、優秀な人が残り、残念ながらその企業でパフォーマンスを発揮できなかった人には、再教育をするか、それでもダメな場合は、他でのチャンスを見つけていただくようにしなければなりません。

厳しいようですが、その企業の人材戦略が正しいかどうかは、優秀な人が残り、そうでない人が去っていくということで判断されるのです。

今の日本企業には、優秀な人が去っていき、そうでない人が会社にしがみつくという状況がけっこう多くみられます。

そういう会社は、これからの時代は淘汰される方向性になることは間違いないと思います。