2014年

4月

13日

人間ドック学会新基準公表で混乱?

2014年4月13日(日曜日)

4月4日に日本人間ドック学会から、「新たな健診の基本検査の基準範囲 日本人間ドック学会と健保連による150 万人のメガスタディー」というプレスリリース向けのPDFが発表されました。

要点をまとめると

目的

今回、本学会においては健康保険組合連合会(以下健保連)との共同で、人間ドック健診の有用性をより明確にし、多くの加入者の生活の質の向上と医療費適正化に資することを目的に調査研究を実施する事になった。(日本人間ドック学会)

となっており、1点が健康保険組合連合会の加入者の生活の質の向上と、2点目が医療費適正化に資するとあります。

そして内容を見ますと、血圧、肥満度、肝機能、総コレステロール、LDLコレステロールなどの正常値が、現在の正常値から見直されて、今まで正常値でなかった人達が正常値の人になるという状況が発生することになります。

マスコミがこの内容を、基準値の変更のみを大々的に伝えたために、それを見た一般の人たちに戸惑いと不安が広がりました。

今現在、あなたのコレステロールの値は正常ではないと言われた人たちが、いえいえあなたのコレステロールは正常です。といわれたのですから戸惑うのも当たり前です。

血圧に関しても、「あなたは高血圧です」といわれていた人たちが、「あなたの血圧は正常値です」となったら「どうして・・・」「何が正しいの・・・・?」となるのは自然でしょう。

急に正常値となった人で、今までコレステロールや血圧の薬を飲んでいた人は、これからどうすればいいのかと迷ってしまうでしょう。

マスコミの報道も、背景や医学的見地の変化などを詳しく伝えないままに、正常値が変わったことだけにフォーカスを当てて伝えたことも混乱に拍車をかけました。

それに対して、日本人間ドック学会は4月8日に「4月4日報道機関へ公表した内容について」という文章をHPで公表しました。

「さて、表記報道機関に公表しました内容と今後の対応について以下のとおりご説明致します。
これは健康保険組合連合会との共同研究事業として渡辺清明委員長の下で2年間の研究事業(平成25年~26年)で開始したもので、現在平成25年度分事業実施報告書として取りまとめ作業に入っている段階であり、予定として5月をめどに最終報告書を取りまとめることになっております。
公表しましたデータについては、この取りまとめ中間報告として厚生労働省及び報道機関へ公表したものです。
つまりこの事業実施報告書を受けて、私どものガイドライン委員会、役員会等にて議論した上で健診の現場で使える判定基準をこれから作成していくと言うこととなります。
現在のデータは単年度の結果であり、今後数年間さらにデータ追跡調査をして結論を出していくことになります。従いまして今すぐ学会判定基準を変更するものではなく、厚生労働省には特定健診の保健指導基準が性別、年齢別によって数値が違うものがあるという事実をご報告した段階であることをご理解いただきたいと考えております。」(日本人間ドック学会)という発表に至りました。

私としては、今回のこの一連の「人間ドックの正常値変更」の発表について、コミュニケーション能力の稚拙さを感じないではいられません。

日本人間ドック学会は、4月4日の公表文章で、「最終的な結果は表に示した。男女差および年齢差を認めない検査が7項目、男女差を認める検査が11 項目、男女いずれかが年齢差を認める項目が8 項目、男女とも年齢差を認める検査が1項目あった。
従来、本学会で設定してある検査の判別値である、いわゆる学会基準値とは近似するものもあったが、それを逸脱する項目もあった。ただ、各検査の関連の専門学会の定める基準値とは大部分は近似していた。
この中で特に学会基準とかけ離れたのはLDL-コレステロール関連の検査であり、従来の基準値より上限値がかなり高くなった。
しかし、今回設定した基準範囲は各専門学会が推挙する基準値とは定義や設定方法が異なるので、同一に比較はできない。したがって、ここで示した基準範囲はいわゆるスーパーノーマルの人はこの検査値の範囲である事を意味するものであり、専門学会がガイドラインで示している疾患判別値とは異なる。
ただ、本基準範囲は150 万人のメガスタディーによる新たな検査値の基準範囲であり、今までに類のない調査結果であるので、今後健診機関の共用基準範囲として健診の現場で用いられる事が期待される。」との内容を盛り込んでおり、「最終結果」というところと「今後健診機関の共用基準範囲として健診の現場で用いられる事が期待される」というところを読み込んだ場合、もう、既定路線として進むなのだろうと思っても仕方がないような気がします。

コミュニケーションのポイントは、受け取る側の状況を判断して、分かりやすく、相手の言葉で伝えるということがポイントです。

プレスリリース用の文章と言えども、その先には一般市民がいて、現在正常値ではないと判定された人たちが大勢いるということを想定すれば、今までの基準値がなぜこの基準値であったのか、それが変わった理由は何か、変わったことで影響を受ける人はどう対応するべきかなどを合わせてケアする必要があると思います。