マニュアル的サービスの限界

2015年2月1日(日曜日)

急激な円安による原材料をはじめとするコスト高と消費税増税で、小売を含む流通業やサービス業そして飲食業などにおいて厳しい状況が続いています。

これらの業種は顧客と直接接している企業が多いためになかなか価格にコスト高を転嫁できないという状態が続いています。さらに労働生産年齢人口の減少により人材不足も重なっており、人件費コストもこれらの業種には大きな負担となっています。飲食業などでは、人手不足が原因で店を閉店せざるを得ないという企業が中小企業だけではなく上場企業にも広がっています。

今、業績を順調に伸ばいしているのは、輸出を中心として好調なアメリカなどを相手にドル建てで商売をしているような一部大手企業に限られるというような状態です。

国内で小売・サービス・飲食業を営む企業は、中小だけでなく大手もかなり厳しい状況になっています。

さらに、国内の消費者は、消費に対して積極的ではなくなっています。

特に物に対しての欲望はかなり減少していて、家・車・衣服・家電といったものに対して所有意欲というものが高度成長期と比較して減退しているようです。

また、お金を出す人たちが、消費者というひとくくりのかたまりではなく、多様なライフスタイルを持つ生活者という概念で捉えないと物やサービスが売れない時代になってきています。そして、生活者はお金を出すときに、単に物やサービスとお金を交換するというレベルから、どのような体験の中でそれをするのかというエモーショナルな部分に重きを置くようになってきています。

そこで特に小売り・サービス・飲食で重要になってくるのが「接客」です。

高度成長期には、アメリカ型のマニュアルによる接客というものが新しく、そのシステマティックな対応が受け入れられてきました。それが、画一的で一定レベルの接客品質を提供できることで売り手も買い手も満足していました。

これは、消費者という相手に対してであり、接客する従業員にマネジメントが決めた画一的な接客を統一レベルで提供するという合理的な方法で、それはそれで消費者に対しては機能していました。

しかし、国内消費は成熟し、消費者が生活者としての振る舞いが強くなるにつれて問題が発生してきました。

これは、もともとマニュアルのマイナス面でもあったのですが、現場に判断をさせるのではなく、マネジメントが作成した画一的なマニュアル通りに接客対応を実施するために、生活者としてのエモーショナルな部分に対応できないというです。今の生活者は合理性だけでお金を出さなくなったのです。

どこかで聞いた話ですが、ちょっと太めの新人OLがランチ会議用に10人分のハンバーガーと飲み物をハンバーガーチェーンに買いに行ったところ、そこのかわいらしい女性の店員が、そのOLが一人であることが明確であるにもかかわらず、とびっきりの笑顔で、10人分のハンバーガーと飲料を差し出し、「お持ち帰りになさいますか?それともこちらでお召し上がりになりますか?」とマニュアル通りに応えたという話しを聞いたいことがあります。

たぶん、このOLは二度とそのハンバーガーチェーンにはいかなかったでしょう。

消費者から生活者に消費の態度が変わったことで、どのような体験ができるかということが重要であり、そして、その体験は人によってツボが違います。

ということは、マニュアルだけでは対応できにくい環境が現れているということです。

インターネットの時代に入りそれは加速しています。

「どのようなリアルな素敵なライブ体験ができるか」が、店舗を構える小売・サービス・飲食業が可及的速やかに対応しなければならない問題です。

ここに、中小企業や創業しようとしている人たちに大きなチャンスが存在します。

大手企業は、システムで現場を運用することでシステム的な接客レベルを提供しようとして、膨大な経費を使いシステムを作成してシステムに沿って現場を運用するようにできてしまっています。

いわゆる、何十万トンの船が西にのみ進むシステムを構築し高速度で航行しているような状態です。これを、東に方向転換するのはとても時間がかかりますし、東に行くためにはシステムを変える必要が出てきます。

つまり、小回りが利きません。

一方、中小企業そして創業者は、小回りが信条ですから素早くこの変化に対応することができます。これは大きなチャンスです。

スターバックス・コーヒーやザッポスのような企業はこのような生活者の体験を非常に重要視し、現場の最前線の人が自ら判断しサービスを提供することを推奨しています。

ここで、需要になってくるのが企業のビジョンと使命の現場との共有です。

我々は、どこに向かってどのような満足を生活者に提供しようとしているのかを理論だけではなく、行動に出るようになるまで浸透させていくことが必要になります。

これには、更に副次的な効果があります。

人間は、自分で考え自分で判断した行動が、人に喜ばれたりほめられたりすると高いモチベーションを形成するようになると同時に会社への提案や意見をたくさん出すようになり組織全体が活性化するということです。

今、中小企業・創業者にとって厳しい状況ではありますが、逆にチャンスと捉えて変化に対応することで大手企業に勝てる時代でもあります。