積み上がる日本の個人金融資産

2015年11月8日(日曜日)

日本銀行が四半期ごとに統計を取っている資産残高の中で、家計の資産残高というものがあります。

9月30日付けで、2015年第2四半期(4~6月)の「資金循環日米比較」レポートというものを出していますが、このデータが日本の景気を占う上で非常に重要なデータなので今回紹介したいと思います。

アベノミクスにより金融緩和・財政支出・成長戦略という3本の矢を放った後、現在のところ株価は上昇して日経平均2万円を達成しましたが、消費税導入後一進一退を続けています。日銀の景気判断もここにきてネガティブな表現が出るようになってきました。

2%のインフレターゲットも、下手をすればマイナスになる可能性も出てきています。

なぜ、金利をゼロにして市場にお金をジャブジャブにしても景気がなかなか上向かないかというと、21世紀の先進国では財政支出の相乗効果が非常に小さくならざる得ない点と、GDPの60%を占める個人消費がなかなか上向かないからということと、企業投資がなかなか国内に向いていないということが大きく影響しています。

もちろん、私が常にお話ししている「人口減」と「少子高齢化」のデモグラフィックな基本的問題が土台にあることは言うまでもありません。

そこで、今回はGDPに大きく影響する個人消費が上向かないのは個人(家計)にお金がないからかというと、そうではないというデータが、冒頭で紹介した日銀の2015年第2四半期の資産の統計です。

まず、個人(家計)の金融資産とはなにかというと以下の6つの分類の合計です。

1.現金・預金

2.債権

3.投資信託

4.株式・出資金

5.保険・年金準備金

6.その他

この合計金額が個人金融資産と呼ばれるものです。

この個人金融資産の推移を見てみましょう。

2001年    1407兆円

2006年      1541兆円

2009年Q1  1410兆円(リーマンショック後)

2012年Q2  1510兆円

2015年Q2      1717兆円

このように、個人金融資産は景気との相関関係とは別にリーマンショック以降22%近くも積み上がっていてその勢いは留まる気配もありません。

つまり、収入の伸びや景気の伸びがないにもかかわらず、個人金融資産が積み上がっているということは、家計から市場にお金が出てきていないということを意味します。

この状況が続くのであれば、景気の回復ということはほとんど見込めないことを意味しています。

元々、日本人は貯蓄性向(可処分所得の中での貯蓄に回す比率)が諸外国に比べて高いという傾向があったのですが、人口減・少子高齢化に伴う将来への不安、そして高齢化に伴ってリスク回避傾向がさらに強まっていることがこの結果の原因となっていると分析しています。

しかも、この個人金融資産の持ち方も日本人らしいリスク回避傾向が見て取れます。

リーマンショック前の2007年の第3四半期と2015年の第2四半期の個人金融資産の各分類の比率を比較してみましょう。

                     2007年第3四半期       2015年第2四半期   米国同期

現金・預金     50.2%       52.0%      13.2%

債権          2.9%         1.5%        4.4%

投資信託        5.0%         5.7%                  13.2%

株式・出資金    11.3%       10.6%                   34.3%

保険・年金準備金    26.4%       25.8%                   32.1%

その他         4.3%                       4.3%                    2.8%

となっており、現金預金と保険等を合わせるとなんと77.8%にも達します。

日本と米国での違いは、投資信託や株式などのリスク商品への投資の比率が2倍から3倍ぐらい違っているということです。

欧州はこの2つの国の中間くらいでバランス型となっていますが、日本はほとんど金利がつかない現金・預金に半分以上預けたままとなっています。

この傾向は、デフレーションの中では正解ということが言えます。

なぜなら、土地も家やモノも値段が下がっているなかでは、現金・預金を持っていた方が、慌ててそれらに変えるよりも待っていれば値が下がるというメリットがあるからです。

今の日本の家計がそのことを理解して貯蓄しているというよりも、将来の不安が大きいということがその原因と分析していますが、そのことがデフレから脱却できない圧力になってしまっているという皮肉な現象が発生してしまっています。

この個人金融資産の積み上がりが、アベノミクスが掲げるインフレスパイラルの好循環に対してマイナスの圧力をかけていると言えます。

従って、これから政府が家計に対して発するメッセージは、将来の不安を解消するという明確なメッセージと施策の提案ということになります。

ただし、日本の家計は今、かつてないほど政策に対して懐疑的になっていると私は思っていますので、抜本的な施策の提案が必要になります。

「オリンピック開催で元気で明るい日本」もいいですが、それは、発展途上国のインフラ整備による景気刺激であり、成熟先進国の日本の国民が豊かになる社会とはどういう社会なのかというビジョンを、国と国民が共有できる施策が必要であると思います。