黒田総裁物価上昇率2%を先送り

2016年11月6日(日曜日)

11月1日の日本銀行の金融政策決定会合を終えての記者会見で黒田総裁は、目標としている物価上昇率2%の達成時期について「2017年度中」から「2018年度ごろ」に実質的に先送りしました。

この先送りは、2013年4月に量的・質的金融緩和を導入してから5回目となっています。

なにか、黒田総裁がおおかみ少年になったような感があります。

しかも、今回の「2018年ごろ」という「ごろ」という表現は、1年先延ばししてもできるかどうかは不透明であるといっているように聞こえます。

黒田総裁の説明では、「2年で実現できなかったのは残念だ。原油価格の下落や新興国経済の減速などが国際金融市場に大きな波乱をもたらした」と説明しているようですが、2013年からの緩和政策の説明にはなっていないと思います。

そもそも、金融緩和の目的は、金利を低くすることと市場にお金を大量に支給して、企業の設備投資と個人の設備や耐久消費財への投資を促し、物の需要の増大によるインフレを期待してのことだと思います。

しかし、金融緩和で今起きていることは、溢れたお金を企業も個人も借りずに将来への投資へ向かおうとしていません。そして、その溢れたお金がどこに行っているかと言えば、大都市と一部の観光地などの不動産へと資金が流れミニバブルが発生して、その部分での若干のインフレーションが起こっている状態です。

結局、銀行もお金を借りたいと思っている民間企業や個人にお金を融資するよりも、昔ながらの不動産を担保にした不動産投資という得意技を続けているようです。

確かに不動産の上昇はインフレを促す一因ではありますが、一部の限られた地域でのインフレであり、他のほとんどの地域は不動産でさえデフレ傾向になっています。

マイホームローンもこれだけ低い金利で35年フラットであれば、諸外国では一斉に住宅購入に向かいますが、日本では借り手があまり付きません。

つまり、これはお金の金利や量的支給という問題では、物的投資を引き出すことはできないという証だと思います。

私は、5年前から日本の人口構造の量的・質的変化と社会保障政策転換をしっかりしない限り日本経済の発展は難しいと繰り返しお伝えしていますがその通りのプロセスを進んでいるように見えます。

日銀の発想は、高度成長期とまったく同じ発想で、量的な物の発想です。

しかし、日本の人口が量的に減っていく中で、量を追いかけても構造的に無理があります。人口減と少子高齢化という量的・質的変化の中では、生活の質をどのように上げるかという発想で経済を考える必要あると思っています。

すでに、各家庭を見れば物はある程度揃っており、住宅もあまってきています。そうした物は、コモディティになりやすくデフレ圧力になります。

生活の質を上げる商品やサービスを開発して提供していく企業こそが、日本では付加価値をつけられる企業として生き残っていくでしょう。

最後に、日銀の金融政策というのは、アベノミクスが掲げる2%物価上昇の3本の矢の1本のはずでした。ところが最近は2%物価上昇率の先送りは日銀だけの責任のように報道されています。

私は、財政政策と成長戦略も統合した3本の矢における2%の物価上昇の先送りのレビューを政府がするべきであると思っていますがいかがでしょか?