人手不足と人材不足の二重の不足が日本経済の最大の問題

2018年1月28日(日曜日)

皆さん,2015年問題というものを覚えているでしょうか?

Wikipediaでみれば、「団塊の世代」が2012年から65歳を迎え始め、2015年にはすべての団塊の世代が年金の全額が給付される65歳以上になるという問題。労働人口の減少が懸念されるほか、年金給付の受給人口の急激な増大により、年金財政への圧迫が懸念されている。とあります。

この団塊世代の人口全体に対するインパクトですが、65歳~69歳の人口(2017年1月時点)は1,000万人超で、0歳~9歳の10歳分を超える人口です。また、労働市場に参入してくると考えられる20歳~24歳の人口615万人を400万人ほど上回っています。65歳以上の人口がすべて労働市場から退出したわけではありませんが、人手不足の最大の原因がここにあることは間違いないと思います。

そして、これから労働市場から退出する人口と労働市場に参入してくる人口の差が広がり続けることは間違いありません。

政府も、この事態に対応するために人手不足の解消に向けていろいろな政策・提言を発表しています。

政府が進めている人手不足に対応する方向性は5つです。

1.女性の労働参加

2.シニアの労働参加

3.生産性の向上

4.外国人の労働参加

女性の労働参加のために、子育てをしながらでも仕事が継続できるように保育施設の拡充などを進めていることは皆様もご存じのことと思います。

企業側も、社内に保育施設を設けるなどして女性が安心して仕事ができるように社内整備を進めているところも報道されています。

しかし、日本の労働市場の大きな問題点は、労働市場が流動的でなく硬直的であるがゆえに、グローバルにダイナミックに変化してるビジネス環境に労働市場が対応できないという点だと思っています。

戦後、日本は高度成長期にやはり人手を確保するため、正社員制度、年功序列制度という「長くひとつの企業に勤めると給料が上がっていきますよ」という制度が定着して、現在でもその制度は多くの企業の給与体系として引き継がれています。政府も失業率の数字をなるべく小さくしたいという思惑から、一度正社員として採用したらなかなかレイオフ出来ないような方向性で企業にタガをはめてきました。そして、バブルが崩壊した1990年代から企業は、この現実に対応するためにどうしたかというと、解雇しずらい正社員の採用を抑え、契約社員や派遣社員などの非正規労働者の比率をどんどん高めていったのです。政府はそれに対して、契約社員といえども5年間を超えて契約する場合は、その社員は正規社員となることを会社に要求できる権利を与えたり、同一労働同一賃金などの義務付けを企業に課す方向で進めています。しかし、このように企業に対して、海外と比較してあまりに人事や給与に関してがんじがらめにすればするほど、先行き不透明感の高まっている昨今のビジネス環境の中で人事・給与の自由度が奪われてしまうと、海外への拠点を移したほうがいいという考えが湧いてくるのも無理はないでしょう。もう一つ、この労働市場の硬直性は企業のなかでも起こってしまっています。

企業のオーナーが今考えている本音は「本当は若くてITリテラシーの高い人材をどんどん採用したい、そしてバブル期に採用した40歳以上のITリテラシーのあまり高くない高給取りの人たちが余っている。」という感じで「もし、彼らに辞めてもらうには、破格の早期退職金をチラつかせないと辞めないし、それをやると、優秀な人間からいなくなっちゃって、いちばん辞めてほしい人が残ってしまう。」というとろこではないでしょうか。

これが、全体は人手不足のなかで発生した、三越伊勢丹グループで実際に起こった破格の早期退職者制度であり、3大メガバンクで起きている大量の人員削減の実態ではないでしょうか。

つまり、ビジネス環境が激変して、求められる知識やスキルもダイナミックに変化しているのに、労働市場が硬直的で流動性をなくしているために大きなギャップが発生していて、ミスマッチがどんどん広がってしまっているのです。

戦後から昭和にかけて安定した足し算型の知識とスキルの進行から、現在求められている労働の知識やスキルは指数関数的に変化するという特徴を持っています。

それが、学校卒業後、一度会社に入ってしまえば正社員である限り基本的に安泰という流れが、労働市場の緊張感と流動性をなくして現状についていけない状況になっていると思います。海外では、これら労働者側も、リセットする意味で、大学に入り直して新しい技術や知識を補填して、またキャリアに戻るというスタイルが定着していますが、日本ではそれとは比較にならないほどその「学び直し」が少ない状況です。

そして、これらに関連して、日本で起きている人手不足よりも大きな問題は、将来的に日本のビジネスをリードしていく「人材不足」です。

世界は今、第四次産業革命をリードすべくAI,IoT,FINTECH,ROBOT技術とビッグデータの解析などでしのぎを削る戦いをしています。それらにより自動運転やキャッシュレス、生体認証、無人店舗、間接業務のロボット化などが近い将来必ず実現することが見えてきています。それらの技術の知識とスキルを持った人材が日本では圧倒的に不足しています。

この日本における、人手不足と人材不足の中でグローバルに将来のビジネスを展開してくことを考えると、企業は、人材を求めて海外に拠点を移すというモチベーションがここでも発生します。

事実、北欧・東欧・アジアの国々では、比較的リーズナブルでITリテラシーの高い若者層を持った国が散見されるようになっており、それらを求めて企業が人材を呼ぶだけではなく、企業が出かけていくという事例が出てきています。これからは、第四次産業革命の中でビジネスを創造できる人材の争奪戦になっていくことは間違いなく、その人材が不足している日本の状況は深刻であると思います。