老朽マンション建て替えと容積率緩和

 

2018年9月9日(日曜日)

先月の日本経済新聞になかなか進まない老境化マンション建て替えについて都が新しい施策を開始するという記事が載っていました。

それは、東京都が老朽マンションを建て替えるために容積率を上乗せすることで建て替えを促進するという内容のものです。

「東京都は老朽マンションの連続した建て替えを促す制度を、2019年度にも創設する。不動産会社が老朽マンションを買い取れば、別の場所に建てるマンションの容積率を上乗せする。買い取った物件の跡地にマンションをけん制つする場合にも、別の老朽化物件を買えば容積率を積み増す。企業主導で旧耐震基準のマンションを建て替え、災害に強い都市を目指す。

老朽マンションを買い取った不動産会社などが周辺で居住者の転移先にもなるマンションを開発する際、容積率を上乗せする。通常よりも分譲戸数を増やせるため収益が増え、企業が建て替えに参入しやすくなる。買い取った老朽物件は解体し、跡地で新たなマンションを開発してもらうことを想定する。跡地の新マンションも周辺の別の老朽マンションを買い取れば、容積率を緩和する。複数の老朽マンションの建て替えが玉突きで進むようにする。小池百合子都知事は今年2月、人口減少社会となる2040年代の東京の土地利用について、都市計画審議会(都計審)に諮問。都は今回の老朽化マンション対策を含む基本方針を18年度中に都計審に示す。都計審での意見を踏まえ、19年度にも具体的な制度を創設する。都は老朽マンションの現地建て替えを促す制度はすでに用意している。17年度には周囲の住民との共同建て替えを条件に、割増容積率の上限を300%から400%に高めた。新制度は老朽物件を周辺の一定エリア内で建て替えることを想定するが、不動産会社が新物件を開発しにくい不便なエリアで糧替えをどう進めるかは、今後の課題だ。」

という記事です。

耐震性の不足しているマンションに対して、容積率上乗せにより外部経済を取り込み、その収益を不動産会社は販売増、居住者は新しくなった耐震性のあるマンションに移り住むことができるという仕組みです。

この老朽化マンションの建て替えについては、2014年12月に施行された「改正マンション建て替え円滑化法」というものがありました。内容は、ざっくりと言って、耐震性不足の認定を受けたマンションについては、所有者の80%以上の賛成でマンションやその敷地の売却が行えるというもので、容積率の緩和特例も設けられていました。

現在、耐震性不足のマンションは100万戸以上あるといわれていますが、建て替えが済んでいるのはなんと200戸から300戸程度です。もう誤差の範囲と言う数しか建て替えが進んでいません。

老朽化マンションの持ち主の高齢化や、空室化、さらに賃貸に使用している物件もあり、緩和された80%の合意ということさえ、まだまだ高いハードルのようです。

また、東京の山手線内やその周辺については、外部経済を取り込んで容積率上乗せによる不動産会社の買取モチベーションも高く、建て替え促進に向かうということが可能かもしれませんが、3大都市および福岡などの一部を除いては、容積率緩和でどれだけ外部経済が取り込めるかは不透明であり、不動産会社も買取に消極的になる可能性もあります。

ここのところ、地震による大規模な災害が阪神淡路、東日本、熊本、北海道と続いており、耐震性の低いマンションがこのままのペースで老朽化していくと、居住者の生命にかかわる問題にもつながりかねません。外部経済を取り込む容積率上乗せは必要なことであり都心部では機能する可能性が高いですが、それ以外の老朽化マンション建て替えには、居住者の安全対策と言うアプローチをとる必要があると思います。